プロフィール

塩入志津子

Author:塩入志津子
編集者・駅弁研究家
JTBガイドブック、旅、情報版など各種延べ800冊の制作編集に携わる。
1987年から2011年まで24年6ヵ月にわたり『JTB時刻表』巻頭グラビアページ「駅弁細見」を連載。北海道から沖縄まで、190社の調製元現場を取材、撮影、執筆。
賞味した駅弁は約1700食。
著書に『旬の駅弁名鑑800』(講談社)がある。

東京ガス主催「全国高校生駅弁チャンピオン大会」(テレビ東京系列)では、3年連続審査員を務める。ほか週刊誌などの雑誌執筆、セミナー講師、講演、TVなど。

ブログの文章トップで掲載の写真は、塩入が撮影。

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三本の柱 


 エッセー1507
  姉の家への途中出会えた
歩道わきのオシロイバナ

城山三郎の著書『打たれ強く生きる』(新潮文庫)の
中に、「三本の柱」という一文がある。
 
一流電気メーカーのエリート社員が自殺した。プログ
ラマ―としての仕事に行き詰まって死を選んだ。
 
極度の緊張と集中を強いられ、テクノ依存症、テクノ
不安症となり、破滅へむかう。
 
コンピュータを利用する広範囲の人々に、この危険が
しのび寄っている。コンピュータ好きの子供たちまで、
この病気にかかる。そのとき両親は、何よりも「親密
な時間」を子供のために割いてやることだ、という。
 
日米ビジネスマンの精神的破滅を数多く見てきたニュ
ーヨークの精神科医、石塚幸雄さんは、著者が「生き
残りの条件」を訊いた時、破滅に至らぬためには人間
は三本の柱を太くしておく必要がある、との意見であ
った。
 
1 その一つが、「インティマシー」。 家族や友人、
  親しい人々とのつきあい。
 「親密な時間」を必要としているのは、子供だけで
  はない。
日本人は、とくに夫婦間の親近関係が弱く、それ
だけ会社での人間関係が非常に濃密になってしま
う。人事に過度に敏感になり危険な傾向となる。
一方、アメリカ人は、インティマシ―の柱が太す
ぎると、配偶者の死や離婚が大きなストレスとな
る。
 
2 そのストレスを避けるためには、「セルフ」の柱を
  太くすることである。自分自身だけの世界。信仰、
  読書、思索、ひとりだけでできる趣味の世界。
3 三本目の柱は、「アチーブメント」。つまり、仕事
  とかはっきりした目標や段階のある趣味の世界で
ある。
こうした三本の柱がバランスよく太くなって、その上
にのって居れば、一本の柱に何か異常が起ころうと、
あとの二本で支えてくれる。
打たれ強さも、そういうことから出てくるのではない
か。
 
仕事の鬼は一本足で立っているようなものである。
その足が折れれば、がっくりして二度とたつことがで
きなくなる。
 
三本の柱を太くするためには、
肉親を愛し、良き友人を持ち、良き趣味を持ち、文学
や芸術を通して自分だけの世界をも豊かにしておくこ
とである。
 
いま自分の柱がどうなっているか。点検しておそろし
くなることがある。
と、城山三郎は、結んでいる。
 
毛利元就の「三本の矢」は、家門を守るため、兄弟が
力を合わせることの大切さを説いたものだが、現代は、
己の中に「三本の柱」を持てということである。
 
与謝野鉄幹は、「友を選ばば書を読みて・・・」、と歌
い、2015年芥川賞受賞の又吉直樹は、「自分の作品を
読んで本を好きになってくれる方が増えればうれしい
」と語る。
 
本や新聞を読む人が少なくなった。イギリスの新聞社
が日本の新聞社に買収された。
日本の文科省は、国立系大学から文系科目の廃止を立
案している。日本の官僚、政治家の教養度の問題だと
思う。
 
人間は、進歩が好きで、怠惰で、少しでも楽をしよう
と思う。その思いがさまざまな便利な物を生み出して
きた。電車の7人掛けロングシート男女7人が、すべ
て、スマホを操っている光景は、何か、不気味な感じ
である。その中に座ろうものなら、無言の騒がしさに
本も読めない。思わず横目で中身をながめると、ゲー
ムにいそしんでいる。
 
私の転居の原因となった、90歳になる姉は、毎日、
2紙の新聞を読み、肉親を愛し、中元・歳暮に神経を
使い、家業の呉服店の客足の減少を憂いながら、日々
立ち寄る近隣の人びとに茶菓をふるまう。そして、欲
と二人連れの、お金の計算の素早さに驚かされる。
 
そのような日々が過ぎる中で、私も自身の柱の財産を
点検して、酷暑のなか、あわてふためいている。
                   2015/07/29
 
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