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プロフィール

塩入志津子

Author:塩入志津子
編集者・駅弁研究家
JTBガイドブック、旅、情報版など各種延べ800冊の制作編集に携わる。
1987年から2011年まで24年6ヵ月にわたり『JTB時刻表』巻頭グラビアページ「駅弁細見」を連載。北海道から沖縄まで、190社の調製元現場を取材、撮影、執筆。
賞味した駅弁は約1700食。
著書に『旬の駅弁名鑑800』(講談社)がある。

東京ガス主催「全国高校生駅弁チャンピオン大会」(テレビ東京系列)では、3年連続審査員を務める。ほか週刊誌などの雑誌執筆、セミナー講師、講演、TVなど。

ブログの文章トップで掲載の写真は、塩入が撮影。

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3月の花売り場

Scan0056.jpg 

美しい人に出会えた日



3月の日曜の午後、近所のスーパーマーケットへ下駄ばき

で出かけた。

 

入口から右手のコーナーが花売り場になっている。

ピンクの大振りの百合がある。つぼみがほんの少し開きか

けた一束を手にしようとしたとき、寝台のようなものが近

づいた

 

30代とおぼしき男性が掛け布の下に、あおむけに寝ていた。

 

車椅子の人は良く見かけるが、全身を横たえた寝台のままの

人に出会ったのは初めてだった。

 

50代と思われる女性が押していた。

 

目で挨拶した。

 

長い取材生活で、初対面の人に話しかけるのは苦痛ではない。

 

「お加減はいかがですか」

「この人は生まれた時からこの状態なんですよ」

「何年になりますか」

「もう38年になります」

「お世話が大変ですね」

「ええ、どこにも行けないので、午前と午後の2回、ここ

にこうして来るのが楽しみなんですよ」

 

少し打ち解けて、話す。幸い、あまりこのコーナーに客は

来ない。

 

とっさに、この方が、息子さんのために38年間、いや、

これからも介護を続ける姿が、頭をよぎる。

 

スーパーの混まない時間を見計らってわが子の寝台を押して出か

けるのが、楽しみ、と、こともなげに話す。

 

この方に無駄な慰めの言葉など、無意味だ。

 

もしかしたら、彼は、彼女が22歳くらいの誕生かもしれない。

さばさばと、にこにこと、こんな言葉がどうして出てくるのだ

ろう。

わが身に比べて感嘆した。

 

彼女の乗り越えた多くの時間に、神様も拍手されているだろう。

 

予算を越えて、百合の花に、白い水仙の大束を加えた。

                      (2014/04/09

 

 


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